パソコンは習わないけど、自分のことを形に

春先の話になりますが、
「広告をみた」と問い合わせがありました。

パソコンはこの先使うつもりはないのだけど
パソコンで代わりに作業してほしい。

手書きのものがあり、それをまとめたかったらしい。
それも十数年分。

「大丈夫ですよ。何とかなります。代わりに作業もしていますよ
 来るまでにまとめておいてくださいね」

そんな電話が来たのが4月頃。
 

そんなのを忘れていた、夏に一通の手紙が来た。

「行こうと思ったのだけれども、主人の急病などが重なって
 なかなかいけませんが、必ずいきますので、よろしくお願い」

といった、丁寧な文章。達筆な方そして、11月に入って明るい声で連絡をいただいた。

そして、やっと教室に来ることができたと、とてもうれしそう。

一回目、「こんな感じでよいですか?」と、打ち合わせ&半分作成。
手書きのものはおいて行ってもらい、こちらでデータ入力することに。

データ入力が終了したので、さっそく校正用に印刷したものを
お渡しする。

そして、今日、やっと作成する日になった。
本当は、印刷会社に頼んで製本をしてもらったほうがきれいなのに
「自分と友人だけで、誰にも渡さないの。私が死んだあと、遺品整理をして
 それが出てきたときに、”こんなのやってたんだね”って思い出してもらえればいいの。」

中身を何度も修正し、
表紙を作るとき、事前に頼んだ、昔習っていた書道の書初めを持ってきてくれた。
その中から、漢字を一文字だけ選んでもらい、
こちらで加工。

こちらがその元。
 

そして、加工して表紙になり、私が試しに作った出来上がり状態を見てみる。
 

 


 

ああ、やっぱり製本テープは苦手だ。
 

 

でも、中身はご本人の想いが詰まっている。
 

 


 

 

完成する前に雑談の中で、こんな話をしてくれた。
 

「私ね、贅沢はしていないの。
 旅行もしないし。飛行機嫌いで。
 ブランド物もわからないし、洋服だって本当に大切に来ててね
 そして、この年になった時に、ふと我に返ったことがあったの。
 “わたし、この年になって、何が残ったんだろう?”って。」

なので、私が思う事を言いました。

「誰かがあなたのことを忘れても
 私はこの仕事をわすれないですよ。
 手作りのものですが、とても良いものができたと思います。
 誰に見せなくなっていい。ただ、形になったってだけで良いと思います」

「そして、私はニコニコしているあなたを忘れません。
 私が死んだら、もうその記憶もなくなるけど。
 生きている限りは、お父さんの時代からのものを
 かたちにした、そのことを、忘れるはずがありません」
 

そして、完成したときの笑顔。

「よかったーー!ほんとうによかったーー!」
 

うん。私もお役にたてられてよかったです。

ちょっと散らかった作業だったけど、楽しかった。